2021年に公開された劇場版名探偵コナンシリーズ、24作目の「緋色の弾丸」。
この作品では化学や物理を使ったトリックが多くありその仕組みが難解だったりしますよね。
この記事ではそんなトリックの中でも、コナンたちがリニア乗車前の健康診断をした病院で起きた事件、ジョンボイドが拉致されるときに使われたクエンチという現象について詳しく解説していきます。
コナン緋色の弾丸のクエンチとは?
それでは早速井上がジョン・ボイドを拉致しコナンたちがリニアに乗るのを防ぐためにしたトリックについて解説していきます。
病院で起きた爆発の名前はクエンチ
まずそもそもですが、病院内で爆発が起きて白い煙が充満したこの現象。
正しい名前は「クエンチ」、英語表記ではquenchとなります。
クリンチやクランチなど似た名前と混同してしまいそうですが正しくは「クエンチ」です^^
クエンチの化学的な意味と現象
クエンチとネットで調べるとこのようにでてきます。
通電中の超電導導体が、熱的、電磁気的または機械的な要因により急激的かつ制御不能な常電導状態に転移する現象。
出典)「電気事業事典」電気事業講座2008 別巻 ((株)エネルギーフォーラム 発行)
はい、もう難しすぎて全く理解不能です^^;
これを本当に端的に言うと
電気抵抗がなくめちゃくちゃ大電流が通っている金属に、何らかの要因でこの状態が阻害されて、急激に電気抵抗を受ける状態となった現象のことを言います。
そしてこの大電流はクエンチが起こると全て熱に変わります。
井上が起こしたクエンチの仕組み
もうめちゃくちゃ簡単に言うと、液体ヘリウムを急激に気化させてヘリウムガスにして部屋に充満させたということなんですが詳しく解説していきます!!
井上はMRI室でクエンチを起こすのですがこの仕組みをお話するにはまずMRIについて知る必要があります。
みなさんも病院でMRI検査を受けたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
MRI室に入るときって服装も病院指定の検査着に着替えて、入室する際は身に着けているものを全てはずしたり体内に金属がある方は申告が必要だったり、レントゲンやCTに比べても非常にルールが多い検査ですよね。
MRIは強い磁場の中で行う検査で、外から電磁波を体に与えることで体内の水素原子が共鳴し、そこから発せられる電磁波を電気信号に変えて画像にする装置です。
この強い磁場を作り出しているものこそ今回のクエンチを起こした液体ヘリウムなのです。
どうやって強い磁場を作り出しているかというと、コイル(針金をぐるぐる巻いたやつですね)を液体ヘリウムで-269度という超低温(ヘリウムの沸点)に冷却することでコイルの電気抵抗が0にし大電流を流すことで作っています。
今回はこのMRIの仕組みを利用して井上は持ち込んではいけない、持ち込んだらコイルに電気抵抗が生まれるものを持ち込んでクエンチを引き起こしたのです。
この行動により、大電流が急激に電気抵抗を受け熱となり液体ヘリウムはあの白い煙、ヘリウムガスなって気化してしまいました。
この気化したヘリウムガスは約700倍に膨張すると言われておりコナンたちがいた部屋は急激にヘリウムガスでいっぱいになってしまいコナン達を気絶させることとなりました。
実際にクエンチは起きる?
ここまで読むと実際のMRI検査中にクエンチが起きたらどうしようと不安になってしまうかもしれません。
しかしほとんどその可能性はないと言われています。
もし仮に起きてしまったとしても速やかに部屋から出る、またヘリウムガスが部屋に充満しないようにMRI室にある排気管からガスが外に出るようになってますし、強制排気ファンの作動など安全対策はとられていますので心配いりませんよ^^
しかしこのクエンチを人為的に起こすことがあります。
それは設備を新しいものに取り換えるときなどです。
こういうときは磁場を落とすため、あえてクエンチを起こさせるようです。
その映像がYoutubeに挙がっていましたので興味のある方はご覧ください。
煙の勢いや量にとても驚きます!!
この処理をするときは火事と間違われないように事前に消防や周辺住民に伝えておく必要があるようです。
ヘリウムガスの白い煙を使ったトリックの人体への影響
クエンチの仕組みや井上の犯行について書いてきましたが、ここからはこのトリックで使われたヘリウムガスについて、コナンたちへの影響などまとめてみました。
ヘリウムガスとは
ヘリウムガスと言えばぷかぷか浮かぶ風船を作るときに注入するガスだったり、声を変えるガスとして身近なちょっとおもしろいガスという印象もあるかもしれませんね。
そんな遊びにも使われるヘリウムガスは無色・無臭・無毒の希ガスで吸い込んでも血液中に溶けないため人体には無害と言われています。
コナンたちが気絶した理由
先ほどにも気化したヘリウムガスは約700倍に膨張すると書きましたが、爆発的に急激にヘリウムガスが充満すると、周りの酸素は急激に減ってしまいます。
酸素不足の空気を一呼吸するとそれだけで人は倒れてしまうのです。
コナンたちは酸素のない気体を吸い込んでしまったので酸欠状態となり気絶してしまいました。
もしこの状態が続くと脳の酸素不足から呼吸停止となり死んでしまうのですが、緋色の弾丸では灰原が言っていた通り犯人に殺す気はなかったためすぐに空気が入れ替わるように配管システムを操作しており死に至ることはありませんでした。
つまりヘリウムガス自体に人を死に至らしめる毒はなく酸欠状態を作り出して倒れてしまったということですね。
ヘリウムガスの事故
ヘリウムガス自体は安全だと書いてきましたが実はヘリウムガスによる死亡事故が過去に何件も起きています。
それは声を変えるヘリウムガスのスプレー缶で勢いよく吸い込んだときに肺が傷つき、そこから血管内に空気が入ってしまったり、100%の濃度のヘリウムガスを誤って吸ってしまったなどです。
間違っても浮く風船の中のヘリウムガスを吸い込んだり、密室でヘリウムガスを充満させたりしないように、またお子さまがスプレー缶を使うときは必ず使用方法や対象年齢を確認の上大人がいるところで安全に楽しむようにしましょう!!
まとめ
コナン緋色の弾丸のクエンチとは?ヘリウムガスを使った煙のトリックについてまとめてみました。
・クエンチとは液体ヘリウムを急激に気化してヘリウムガスにすること
・ヘリウムガスは無害だが酸素が急激になくなり酸欠状態となり気絶してしまった
最後までお読みいただきありがとうございました!!
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