1953年に製作された不朽の名作「ローマの休日」。
タイトルだけならだれもが度は耳にしたことがあるというぐらい有名な作品ですが、この作品は前編白黒ですよね。
1953年といえばカラーがだいぶ普及してきた時代で、なんなら戦前に製作された風と共に去りぬはフルカラーなのになぜこんな名作のローマの休日は白黒なのか、疑問に思いませんか?
その理由はこの時代ゆえの複雑な事情にありました。
この記事ではローマの休日はなぜ白黒(モノクロ)で製作されたのか、その理由についてまとめました。
ローマの休日が白黒(モノクロ)なのはなぜ?
では早速なぜローマの休日は白黒なのかについて書いていきます!
お金がなかった
まず第一の理由として製作予算がありませんでした。
この予算がなかった理由はのちに詳しく書きますが政治情勢が非常に悪くハリウッドでもその影響は強くありました。
そのため十分な予算を確保できない中での製作になったため、単純にカラーで作る予算がなかったのです。
実は製作当初はカラーの予定だったし、監督もフランク・キャプラという方がやる予定でした。
しかし希望していた製作費が大幅に削られると知り辞退したことからウィリアム・ワイラーに代わったという話があります。
ワイラーもカラーで撮りたい希望はあったためこのことは最後まで悔やんでいたそうです。
撮影方法の労力が大変すぎた
当時の撮影方法は今とは全く違い大変労力のかかる方法しかありませんでした。
このローマの休日が製作される年代はちょうど新たなフィルム、イーストマンカラーという安くて使い勝手もよいものが出回り出したころでした。
今までのような労力をかけてまで撮る余裕も、まだ普及しきれてない新しい技法を取り入れる余裕もなかったのです。
ヒロインのオードリーが無名だった
製作費の削減により監督が代わったと書きましたが、実はヒロインももともとオードリーではありませんでした。
これも予算がないことから予定していた女優さんのキャスティングができず、低予算でできる女優さんを探すこととなりオードリーに白羽の矢が立ったのです。
今でこそ誰もが知る名女優のオードリーですが、当時の彼女はまだまだ無名同然の女優でした。
製作費がないから彼女が抜擢されたし、そんな無名のキャストが出る映画に製作費は上げれないという事情がありました。
この点で言うと風と共に去りぬのキャストはもうこの時代を代表する大スターが担っています。
作品にかける予算には雲泥の差があったことが伺えます。
ハリウッド初のローマロケ
ローマの休日の重要なコンセプトの1つは「ハリウッド初のオールローマロケ」というものでした。
海外でのロケは予算がかかるもの。
このコンセプトは譲れないものだったからこそカラーにする余裕はなかったのだと思います。
そしてこのローマでオールロケをするというのはウィリアム・ワイラーが監督を担う上での絶対条件だったそうです。
なぜローマでオールロケなのか。それはのちにかく社会主義者差別とも関係しています。
カラー版はある?
過去に一度人工着色をしたバージョンの作品が公開されたことがあるようですが評価はいまいちでその後製作はされていないようです。
リメイクされたものではカラーのものがありますが、オードリーヘップバーンのローマの休日では現状白黒しかありません。
ローマの休日が白黒(モノクロ)の理由は赤狩りや差別?
先ほど製作費がないことを1番の理由と書きましたが、そうなってしまった理由は当時のアメリカの情勢にありました。
では詳しく書いていきます。
赤狩り
当時のアメリカと言えば米ソ対立の東西冷戦時代で非常に緊迫していました。
その影響はハリウッドにも多大にあって、映画関係者から共産主義者を排除するという赤狩りと呼ばれる運動がおこりました。
今でこそ自由な発言ができますが当時は異論を唱えようものなら排除一択だったのでハリウッドからもたくさんの人たちが排除されてしまいました。
共産主義者差別
実はローマの休日の脚本を担当したダルトン・トランボは赤狩りによってハリウッドを追放された一人でした。
そのため身の上をごまかすために、ローマの休日の脚本のクレジットは別の名を使っています。
ウィリアム・ワイラーが監督自身は共産主義者ではないですが、共産主義者たちの多くがユダヤ人で自分と同じだったことや下積みを経験し労働者のつらさを理解していたため、この赤狩りによる差別が許せなかった。
そのことからこのような状態のハリウッドから離れて監視の目がいきとどかない場所で自由に製作するためにローマのオールロケは譲れなかったようです。
ローマの休日にはこんな社会の差別が多大に影響している中で作られた作品だったのですね。
まとめ
ローマの休日が白黒(モノクロ)なのはなぜ、理由は赤狩りや差別なのかについてまとめました。
・白黒の理由は製作費がないから
・共産主義排除の差別運動、赤狩りが横行している中で製作されたから
最後までお読みいただきありがとうございました!!
コメント